"La Lumiere et l'Ombre"

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zoom RSS 『照明』と『ライティング-"LIGHTING"-』の違い

<<   作成日時 : 2007/12/15 03:20   >>

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<<バロックの巨匠、カラヴァッジオの代表作“聖マタイの召命”>>

前々回、僕にとって、『照明』と『ライティング/Lighting』は違うという話に触れた。そもそも、“照明”という言葉を辞書で調べると、“-光で照らして、明るくする事。 -撮影効果を高める為に人工的な光線を用いる事。”とある。勿論間違ってなどいない。ただ、僕が先日紹介した“三人の神様”(Tak Fujimoto, Gordon Willis, Gregg Toland)達が手掛けた作品を観ると全く逆の発想になってしまう。 

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<<Gordon Willisが撮ったサスペンスの名作『コールガール』。明と暗の使い方がうまいというより、“黒”の使い方がうまいという印象を受けた。>>

あくまで僕の一個人として意見だが、 この三人に限らず、欧米の素晴らしいシネマトグラファー達(cinematographer/director of photography-->"DP")の“光”の使い方は、この辞書の解釈とは完全に逆だ。科学的に言えば、フィルム(ビデオテープ、ハードディスク)に映像を残す為に、辞書の解釈通り“光で照らして、明るくする”という作業は欧米作品においても行われる。でも、それは、あくまで、“必要なもの”を写す為に行う作業の一部。素晴らしいDP達は、明るくする為に光を使っているのではなく、『影"SHADOW"』を作る為に光を使う。

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<<バロックの巨匠、オランダのレンブラント作“愚かな金持ちの譬え”僕にはこの作品の中に“照明”は見えない。この人物の内面を表現しているのは“ライティング”>>

一番分かりやすい例を挙げれば、日本や韓国のテレビドラマ。 いわゆる『月9ドラマ』系の映像。影が無い!!! 絶対にあり得ない・・・。時代劇。戦国時代の物語。その時代の“光源”とは、ろうそく、ちょうちん、行灯、油・・・、そう、“火”です。電球ではありません。でも、実際画面で見ると、蛍光灯や電球の明かりに見えてしまう。ありえない・・・。映画でも、日本と欧米の、特にホラー、サスペンス、ドラマを見比べてみると、分かりやすいと思う。欧米の場合、見えるもの、見えないもの、つまり、明部と暗部のバランスに常にメリハリがあり、スクリーンとは平らな二次元だが、そのメリハリが、画面に奥行きを出し、より三次元に近い視覚効果を生む。それでいて、不思議なことに『自然』な感じがする。

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<<同じくレンブラント作品“エマオの巡礼”。目の前の男が、復活したキリストであるとはまだ知らない二人の弟子>>

辞書で、英語の"LIGHT"という言葉を調べてみる。すると、本来の光という意味以外に、面白い解釈が述べてある。『物事の考え方、観点』、『知識、説明』、『私見、好み』等。Gregg Tolandが『市民ケーン』で、Tak Fujimotoが『羊たちの沈黙』、『シックス センス』で、Gordon Willisが『ゴッドファーザー』、『コールガール』、『大統領の陰謀』で用いたライティング手法には、こういった解釈が見事に当てはまると思う。つまり、光を使った表現によるストーリーの伝え方。『羊たちの沈黙』で、アンソニー・ホプキンスとジョディ・フォスターがガラス越しに会話するシーンでは、微妙なライティングが使われている。
http://www.youtube.com/watch?v=MzPHdAR7J0Q&feature=related

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<<ロココ期のフランスのフラゴナール作 “閂(かんぬき)”僕の一番好きなフラゴナール作品。この男女の関係を光と色で暗喩的と言うか比喩的と言うか見事に表現している。この作品の解説を探したので興味のある方はどうぞ。
http://www.salvastyle.com/menu_rococo/fragonard.html>>

人間見えるものには、それほど疑問を持とうとしないが、見えにくいもの、見えないものに対しては、『感じたり、考えたりする』。よく、『やってはいけない』とか『見てはいけない』と言われると、それとは逆の事をやりたくなる衝動に駆られる事があるが、その感覚と似ているのではないだろうか。また、映画を創る側は『観客をいかにしてストーリーに引き込むか』、つまり、考えさせたり、感じさせたりする為の“キッカケ”を巧妙にライトを使ってスクリーンに忍び込ませていく。

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<<バロック期の代表的画家、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール作 “聖ヨセフの夢”。天使が現れマリアがキリストを身ごもった事を伝えている場面>>

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<<同じくラ・トゥール作 “悔悛するマグダラのマリア-聖なる炎の前のマグダラのマリア-”これは結構有名な作品。>>

言葉の“響き”から、僕は『照明』という言葉には明るいイメージしか湧かない。光を“煌々”と当てる、という感覚。『ライティング』に対しては・・・、もっと、こう・・・、何と言ったらいいか、ドラマチック、ロマンチックな感覚を憶える。単なる言葉の響き、横文字だからと言われてしまえばそれまでだが、『ライティング』と聞くと同時に“ムード”という別の言葉を思い浮かべ、“ムード”と聞くと『ライティング』を思い浮かべる。そしてどちらが、映画に関して適した言葉かといえば、僕にとっては、後者になる。ただ、これは人それぞれのスクリーンに映し出される“画”への好みの問題もあるだろう。絵画のように、日本の浮世絵、絵巻物、図屏風などを好む人もいれば、バロック絵画(レンブラント、フェルメール、カラバッジョ、ルーベンス、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール)、ロココ絵画(フラゴナール)、そして、ルネサンス(ダ・ビンチ、ミケランジェロ)などを好む人、はたまた、具象絵画(エドワード・ホッパー等)等を好む人。映画は色々な芸術、特に絵画の影響を大きく受けているのは間違いない。

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<<アメリカの具象絵画を代表するエドワード・ホッパー作 “New York Movie” この一枚は、トム・ハンクスとポール・ニューマン主演の映画『ロード・トゥ・パーディション』のライティングのモチーフになった。ホッパーの作品はごくありふれた日常の人をモデルにしているが、非常に孤独を感じさせる。前回、マサチューセッツ州で行われた、スチールの撮影風景の写真を掲載したが、カメラマンはグレゴリー・クルートソンで彼は、ホッパーの影響を強く受けたアーティストだ。彼の撮影についてはまた後日触れたい。>>

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
 早速見ました! 
どんどん更新してくれ。遠い熊本から応援してます。
ryo
2007/12/15 12:53
先日、熊本のキリスト教殉教の舞台劇「アグネス」を観に出かけました。舞台と映画またテレビはそれぞれに美術照明は違うと思いますがやはり照明は重要な役者と一緒だと思いながら観てしまいました。
なんだか感化されて映画を観ていてもライティングが気になるこのごろとなりました。
キャサリーンマリー
2007/12/15 22:19
ryo君、メール無事に届いて良かった。今回はすぐに君のアドレスセーブしました。長男U君はどう?先日帰国した時に元気な姿見せてくれて嬉しかったです。それにしても、最初にお披露目してくれた時は、生まれたばっかりで、まだ首も座らぬ頃。その間写真は送ってくれてたけど、先日再会してもう走り回ってる姿を見ると子供の成長の早さには驚かされます!体には気をつけて、頑張れよ!愛妻、Hちゃんにもよろしく!
Mr.Y君
2007/12/15 22:36
キャサマリさん。舞台照明は、個人的には、映画より難しいと思います。技術的には映画に比べるとかなりシンプルですが、場面によってリアルタイムで適切な色、ライトの角度、光量調整等の作業ををお客さんに見えないようにやらなければならないし。映画はその点“創り込める“から。でも、舞台劇からも学ぶ事は沢山あります。特に色使いや舞台セット。次回帰国した時は、長年の歌舞伎鑑賞の目標を達成したいです。
Mr.Y君
2007/12/15 22:44
おめでとー
shibuya
2007/12/23 13:37
カラバッジオはアムステルダムのゴッホ美術館の特別展で偶然に観る機会を得ました。その皮膚の色がわすれられません。描かれた瞳に自分が見透かされているような感覚も。その後映画『カラバッジオ』が、大切にしている写真集「derek larman's garden」のデレク・ジャーマンによって撮られているのを知りDVDを購入鑑賞しましたが、絵の輝きがピンとこないで途中でストップ。光と影、もっと色々にお話を拝見できるのを楽しみにしています。
歌舞伎では「闇」の描き方がおもしろく、観客との間に存在する暗黙の約束事、いわゆる「型」が他の演劇にはない魅力だと思います。先日歌舞伎初体験をした息子もたいへん興味を持ったようでした。是非ご覧くださいませ。
メルシーラパン
2007/12/25 10:55
shibuya君、コメント返信遅くなって申し訳ない!僕もいよいよ三十路に突入。でも、感覚的に22,23歳くらい・・・。来年も宜しく!
Mr.Y君
2007/12/30 13:32
メルシーラパンさん。デレク・ジャーマンを知ってらっしゃるなんて『通』ですね!ジャーマン作品全て観てはいませんが、個人的に好きなのはシェイクスピアの『テンペスト』。舞台出身、ケン・ラッセルに師事していたという事で、アメリカ映画とは全く違った異種的な映像がかなり印象的です。無名だったミュージシャンを自分の映画のサウンドトラックに使ったり、新しい才能を発掘する事にも長けていた人ではないでしょうか。イギリスの奇才中の奇才ですよね。ライティングに関して言うと、正直僕の好みではなかったけど、作品自体には他の誰にも真似できないものを常に持っていた人だと思います。本当の意味での、ビジュアルアーティストだと思います。
Mr.Y君
2007/12/30 14:02

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