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zoom RSS 古き良きハリウッド、"The Dark Knight Rises"、満足、でも複雑な想い・・・

<<   作成日時 : 2012/09/05 18:55   >>

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ニューヨークも猛暑を過ぎ、残暑も終わりに近づき、ちょっとだけ僕の大好きな秋に近づきつつある。

8月中旬に"Can A Song Save Your Life?"の撮影を無事に終え、直ぐ"ボードウォーク エンパイア"に戻った。今は、来週から10週間の予定で始まる次の映画の準備をやっている。フランス映画でタイトルは"チャイニーズ パズル"(原題"Casse-tete chinois")。主演はフランス映画『アメリ』や『ダビンチ コード』でお馴染みのオードリー・トトゥ。

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ここ数週間は準備と"ボードウォーク エンパイア"で比較的ゆっくりしたスケジュールだったので、数日前に『ダークナイト ライジング』を観に行った。前二作同様、というよりも、シリーズ最高だった。クリストファー・ノーラン監督が創り出す彼独特の世界観、全ての彼の作品を観ているが、いつも感じるのは、彼の創る映画は彼にしか出来ない作品ばかり。だから、彼の作品は必ず映画館で見る。ただ、今回、唯一、ただ一つ腑に落ちなかった点がある、日本人として、腑に落ちなかった事。クライマックスでの核爆弾の扱いだ。これ以上言うとネタバレになってしまうので、ここでは、控えておきたい。ただ、日本人として、原発問題を抱える日本人としては、頂けない部分だったのは事実である。既に、観られた日本人はどう感じただろう?

話しは少し逸れるが、『ダークナイト ライジング』公開初日に、コロラド州の映画館で無差別銃乱射事件が発生。。。被害にあった人達は、たまたま映画を観に行っていただけ、そこで命を奪われたり、銃撃されたりと、あまりにも冷徹な事件だ。被害者の御冥福、怪我をされた人達、家族の回復を祈るばかりだ。アメリカの銃問題にも近いうちに触れたい。

今回のシリーズ第三弾、見終わった後に、子供の母親に連れられて見に行ったハリウッド作品の多くを思い出した。近年、アメリカ映画の"ネタ切れ"が言われるようになったが、僕個人的には、日本のメディアが言う程までそれは感じない。なぜかと言うと、日本で公開されるアメリカ映画は、いわゆる大作ばかりだからだ。インディーズ系の小、中規模作品の多くは日本でほとんど公開されない。その日本未公開にとんでもない秀作が沢山あるが、日本では陽の目を見る事が無いのが、個人的に非常に残念だ。20年、25年前、僕が子供の頃見ていたアメリカ映画にはいつも爽快感、夢や独特の喜悦感があった。それが、やや薄れているのは確かだろう。しかし、制作レベル、作品の奥深さ、そして、映画が映画である所以は、確かに駄作と呼ばれるものが多いとしても、そのレベルは今でも高いと思う。テレビドラマには無い"映画の文法"がある。今、アメリカのテレビドラマは全盛と言われるが、それでも、映画とテレビにはきちんとした、文法の違いがある。

(予告編)
(予告編)
(アメリカ版予告編)
(メイキング)

http://wwws.warnerbros.co.jp/batman3/# (日本語HP)

僕は死ぬまでにシネマトグラファーとして日本の時代劇(侍、武士もの、政治・歴史もの)を一本撮りたい。『ラストサムライ』のようなものではなく、史実に基づき、きちんと構成されたストーリー、きちんとかけるべきお金をかけ、かけるべき時間をかけ、監督、俳優も日本人による純粋な日本の時代劇映画。これが、僕の日本人としての夢であり目標だ。しかし、今回、『ダークナイト ライジング』を観て非常に複雑な想いになった。古き良きアメリカ映画の神髄を堪能出来たのは良かったが、お茶の間ではなく、スクリーンでしか表現出来ない壮大な時代劇を創れる日が再び日本映画界に来るのか、と感じられずにはいられなかった。

先日、youtubeで俳優の津川雅彦さんが日本映画界の衰退、問題に関して話していらっしゃったが、いくつか非常に印象に残った言葉がある。

「ハリウッド、アメリカの映画製作には"愛情'があり、映画の素晴らしさをきちんと若い世代が受け継いでいる。」「ヒット作『アバター』を始め、エンターテインメントにならないものを、エンターテインメントにする力が日本とはレベルが違う。」「日本映画界は、プロデューサー、監督、脚本家、俳優を含めレベルをもっとあげないとどんどん世界から取り残される。」「安いテレビドラマが、日本人の映画を観る力を衰えさせた」

日本映画全盛を現場で生きてきた津川さんならではの意見だと思う。津川さんのおっしゃる事は決してアメリカのように映画を作れと言う事ではない。「映画の力」の話しだ。僕個人的には、それは「感性」を磨く事だと思う。映画を見て感性を磨く、これは僕の大好きな淀川長治さんから学んだ事。

小津作品、黒沢作品、溝口作品、木下作品、日本映画の黄金期の監督たちの作品はまさに「映画」だった。これらの監督たちの作品にはエンターテインメント、プラス比喩的表現が多く盛り込まれ、それを観客たちが読み取った。また、日本の文化、歴史を大いに取り込んだ映画が多かった。しかし、最近は、テレビドラマの延長、コミックの実写化ばかりになり、日本人が創るべき世界観と言うのが完全に薄れてしまった。

そんな中でも日本の納棺師を描いた「おくりびと」は最高だった。映画の"文法"をきちんと使って、日本人の慎ましさ、死生観を見事に描き切っていたと思う。あれは、決してテレビドラマでは出来ない。

(『おくりびと』予告編)


アメリカ映画に限らず、質の良い外国映画を見るといつも感じる事だが、今はコツコツ頑張って勉強するしか無い時期だ。そして、しっかりした経験と実力を積み上げ、人脈を築けば可能な目標だと信じている。そう思わなければ、諦めた事になるし、日本人でなくなってしまう。

今だからこそ、若い人や、子供たちには、黒澤明作品を観てほしい。「世界のクロサワ」「世界のミフネ」。今、日本映画界に「世界の」と付く監督や俳優が何人いるだろうか。僕の大好きなダレン・アロノフスキー監督(『π』『レクイエム』『ファウンテン』『ブラックスワン』)が言った、「クロサワの『七人の侍』には、映画監督が学ぶべき要素が、全て詰まりまくっている。」アメリカ映画を代表する若手監督達やヨーロッパの監督たちに影響を与えた黒澤明監督。こういう監督たちの言葉を聞くと、若手、後進の人材育成が上手く行っている国ほど、映画の質も量もレベルの高い作品が多い。日本も若い人にチャンスを与える土壌、環境をしっかり作ってほしい。

(『七人の侍』予告編)
(『乱』予告編)
  (『悪い奴ほどよく眠る』予告編)
 (アカデミー賞特別名誉賞授賞式)
(淀川さん黒澤明を語る)
 (淀川さん『2001年宇宙の旅』を解説)
(淀川さん『スターウォーズ』を解説)
 (淀川さん『ダイ・ハード』を解説)

子供の頃平日はテレビを一切見せてくれなかった両親だが、週末の日曜洋画劇場は許してくれた。その為淀川さんには本当にお世話になりました。今見ると、やっぱり懐かしいし、夢を感じさせてくれ、更に映画に引き込んでくれる。こんな、評論家が今でもいたら、子供たちの人生も変わるかも。

『さよなら、さよなら、さよなら』

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はじめまして。
『崖っぷちの男』の撮影風景のリンクから、こちらのブログへ初めて参りました。映画制作の舞台裏という貴重なお話は勿論のこと、ご自身の留学のお話からアメリカでの仕事について、または日本のご家族との温かなお話など、ワクワクしたりジーンとしたりしながら沢山拝読させていただきました(実は風邪をひいて携帯から読ませていただいていたのですが、思い切ってコメントを書かせていただきます)。

私自身の話で恐縮ですが、祖母たちは日系人強制収容を経験しており、一方広島に残った親戚たちは原爆投下によって被曝経験をしております。(『愛と哀しみの旅路』という1999年の米国映画について、当方のブログに少し書いてみました http://afternooncinema.blog.fc2.com/blog-entry-124.html)
私も映画が大好きでアメリカ映画もよく鑑賞しますが、やはり映画の中での原子爆弾の扱いに暗い感情を持ってしまいます。ちょっと威力のあるバクダン、くらいの気持ちなのでしょうが、被爆国でもあり原発事故をも経験した日本人からすると、言葉は悪いのですが、その無神経さや無自覚さがとても恐ろしいものに思えたりします。また一方で、そういった思いを日本からもっと発信しなくてはいけないのかな、とも思います。

話はかわりますが、こちらの記事にある"映画の文法"や"映画を観て感性を磨く"という話題、大大大共感!!でした。日本映画にあった迫力、粋、慎ましさなど、今観ても惚れ惚れする作品が多くありますね。いつか素晴らしい時代劇映画を撮られることを、ずっと応援させていただきます!

東京は今、桜が綺麗ですね。滞在の間、日本の春をどうぞ満喫なさっていってくださいね。また遊びにまります^^
はなまるこ
2013/03/23 20:51

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